(2020年7月1日発行)

自筆証書遺言書保管制度がいよいよ7月10日から始まります。自筆証書遺言書に関る手続きの変更では、昨年1月に第1弾として、財産目録の手書き方式の緩和が行われています(※)が、この保管制度の創設は一連の変更の最後の目玉と言えそうです。確認していきましょう。

※FPの会だより第6号にてお伝えしています

◆自筆証書遺言の特徴と制度が出来た背景

自筆証書遺言は民法968条に規定されている遺言方式で、遺言者本人が財産目録を除く全文、日付、氏名を自書して作成します。手軽に作成できて自由度が高いのがメリットですが、遺言者が亡くなった後相続人に発見されなかったり、相続人に改ざんされる恐れがある(された)、等のトラブルが指摘されてきました。

自筆証書遺言書保管制度は、これらのトラブルを解消すべく創設され、法務局(遺言書保管所)が遺言書を保管してくれるようになるものです。

◆手続きの概要

この制度の手続き(流れ)は次の通りです。

1.遺言者の手続きと流れ

遺言者は、保管を希望する法務局を決めて、保管申請をします。保管申請が出来るのは、遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地、のいずれかを管轄する法務局です。法務局では本人確認や必要書類、遺言書の形式的な確認(全文、日付と氏名を自書しているか、押印があるか)等を行い、自筆証書遺言書一式を預かります。遺言書は原本とデータで保管されます。遺言者は、遺言書を預けた後に遺言書を閲覧したり、住所等の変更を届け出たり、あるいは遺言書を返してもらう(保管申請の撤回)ことも可能です。

2.相続人の手続きと流れ

遺言者の死亡後(相続開始後)、相続人は遺言書が保管されているかを確認し、遺言書があればそれを閲覧したり遺言書の内容を記載した証明書を取得することができます。相続人が遺言書の閲覧や情報証明書の取得を行った場合には、その他のすべての相続人等へ遺言書が保管されている旨の通知が行われます。なお保管されていた遺言書は家庭裁判所の検認が不要となります。

◆費用など

遺言書の保管申請(遺言者)に係る手数料が1通3,900円、遺言書の閲覧請求に係る手数料が1,400円(データ)と1,700円(原本)です。そのほか証明書の交付請求は、内容により800円~1,400円です。公正証書遺言と比べかなり安価です。

◆注意点

費用も安く、安全に保管してもらえて便利な制度ですが、注意点もあります。

一つ目は、保管を申請する際には必ず本人が行かなければならず(本人出頭義務)、代理申請ができないことです。公正証書遺言のような出張サービスはありません。二つ目は、法務局は遺言書の形式チェックはしてくれますが、遺言の内容についてまでは確認しないことです。遺言の内容を審査しないので、有効な内容であるかどうかまでは分かりません。内容によっては争族になるリスクもはらんでいるので注意してください。

新制度開始は7月10日からですが、今日から保管申請の予約が出来るようになりました。法務省のHPには特設サイトもできています。興味のある方は、是非特設サイトものぞいてみてください。 (青山)