(2021年10月15日発行)

日没が早くなり、秋の深まりを感じるようになりました。秋の夜長には、本を手に取りたくなりますね。前々回にお送りした図書のご紹介が好評でしたので、藤井より第二弾をお送り致します。

◆必ず役立つ防災の教科書「レスキューナースが教えるプチプラ防災」

 東日本大震災から10年経ちました。日本は世界的に見ても地震の危険度がとても高い国です。震災以降10年の間に、震度5強以上の地震は75回(そのうち震度6弱以上の地震は30回)も発生しています。地震だけでなく豪雨災害も毎年のようにおきています。実際にこれだけの頻度で発生している自然災害でも、被災者になった経験がないと、防災に対しての意識は薄くなりがちです。しかし被災してからでは遅いのです。命を守り、被害を最小にする防災力は、日常生活の中で誰もが高めておきたいスキルです。そのスキルを高めるために役立つ本「レスキューナースが教える プチプラ防災」(扶桑社)を紹介します。

著者の辻直美さんは、災害レスキューナース(※1)で、国内外の被災地へ20回以上派遣された経験があります。その過酷な経験をもとに本当に使えた防災術を多くの人に知って欲しいと、防災に関する講演などを精力的に行っています。またご自身も阪神淡路大震災、大阪北部地震で2度被災された経験があり、まさに実体験からうまれたスペシャリストのシンプル自衛術として書かれたのがこの本です。

辻さんの防災術の特徴は、「シンプルで心地よく暮らしているだけで、いつのまにか防災になっていること」です。「地震に強い家づくり」では、同じ震度6弱の地震でも、耐震対策のあるなしで被害が全く違う写真が掲載されています。辻さんのキッチンは、しっかり対策をしていたので調味料のボトルが4本倒れただけなのに、同じ間取りの隣家は割れ物が散乱し1か月以上も住めなくなったそうです。その対策は、ほぼ100均で買えるものを使って行う、タイトル通りのまさにプチプラ防災です。

4章立ての内容は、地震や水害などから「命を守るための備え」「災害発生!72時間を生き延びる方法」「被災地を生き抜く知恵とテクニック」「災害が起きても動じない心をつくる」と言う構成で、最後に備蓄量の目安も掲載されています。著者のあとがきでは、「この本は、読むだけで終わらせずに、実際にやってみてください。あなたが、そして大切な人が生き延びる確率を飛躍的に上げてくれるはずです。」と結ばれています。私はまず段ボール箱を活用して冷蔵庫が倒れないようにする対策をすぐに実行しました。我が家はまだまだ課題満載ですが、少しずつ実行するつもりです。皆さんにも是非一読をおすすめします。

(藤井)

(※1)被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担う看護職で、都道府県看護協会に登録されている。大規模自然災害発生時には、看護協会が派遣調整を行う。