(2022年11月16日発行)

門扉に紅葉の吹き溜まりができるようになりました。秋の深まりを感じるこの頃ですが、またもや新型コロナの感染拡大が急速に進んでいるようです。お出かけの予定が多めの方も少なくないと思いますが、感染に気を付けながら、楽しく元気に過ごしたいものですね。

◆「所有者不明土地」の利用を円滑化するための民法改正について

前回のメルマガでは、「改正所有者不明土地法」が施行されたニュースについてお伝えしましたが、土地の所有者が不明なために生じる様々な問題を解決するために、昨年民法改正も行われました。施行は来年(令和5年)4月1日からです。改正は4つありますが、特に私たちの生活に関わりのある2点についてお伝えします。

◆改正①相隣関係の見直し

相隣関係とは、いわゆる「お隣さん」との関係です。旧民法では「所定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用する権利を請求できる」とされていましたが、「所定の目的」や「請求」についての解釈(隣人の承諾が取れない場合はどうするのか)等があいまいで問題がありました。

今回の改正ではその点が改善され、障壁や建物の築造・修繕、境界の調査や測量、伸びて越境してきた竹木の枝の切取り等の目的のために、隣地を使用することができる(承諾を得なくてもよくなる)ようになります。

また、以前の民法では規定されていなかった「ライフライン設備の設置やそれを使用する権利(使用権)」についてもルールが整備されました。改正後は電気・ガス・水道等のライフラインを自分の土地に引き込むために導管等の設備を他人の土地に設置できることや、他人の所有する設備を使えることが明確になり、設置や使用にあたっての通知や費用負担等のルールも整えられます。

さらに、催促しても越境した木の枝を切除してもらえない場合や、隣地が所有者不明である等の場合には、越境された土地の所有者が自らその枝を切り取ることができるようになります。

◆改正②共有制度の見直し

所在不明な共有者がいる共有不動産や共有物については、共有者の間で意思決定ができないために処分や管理行為等ができないという問題がありました。

今回の改正により、共有物の軽微な変更については全員の同意が不要となり、持ち分の過半数で決定することができるようになります。例えば共有私道で所有者が分からない持ち分がある場合、道路の舗装や樹木の伐採等の軽微な変更は、残りの共有者(持ち分の過半数)で決めることができるようになります。

また、地方裁判所に申し立てて決定を得れば、残りの共有者が不明共有者の持ち分を取得したり、その持ち分を含めて不動産全体を第三者に譲渡(売却)したりすることも可能になります(その場合には裁判所に持ち分相当額の金銭供託が必要)。

上記2つの改正のほか、遺産分割についての新ルール(相続開始後10年以上経過してから遺産分割を行う場合は、原則法定相続分で分割する)や、所有者が不明な土地・建物について、裁判所が管理人を選任して財産管理を行う制度が新設される予定です。

法務省では、所有者不明土地の解消に向けた一連の改正について、様々な広報を行っています。動画も下記URLのものの他色々作成されていますので、関心のある方は覗いてみてくださいね。 (青山)

https://www.youtube.com/watch?v=il6UGPPxBtw