(2023年5月16日発行)

新型コロナ感染症の分類が5類に移 行し、日常生活がどんどん活発になっています。今日は全国的に気温が上 がりましたが、マスクをせずに元気よく外出できるのはとても有難く、 嬉しいですね。

◆学生の「年収の壁」を確認しよう◆
さて社会・経済活動の正常化が急速 に進みつつある今、求人も増えているようです。アルバイトに勤しむ学生さ んもさらに増えるのではないでしょうか。パート、アルバイトで働く場合の所 謂「年収の壁」は、パート主婦だけでなく、学生にも当てはまります。今日は、アルバイトをして給与所得を得ている学生が注意すべき年収の壁と、注意点について確認しましょう。

◆学生の年収の壁は?◆
収入が一定金額を超えると、税金や社会保険料の負担が増えます。この境目が「年収の壁」です。一般的には大きく分けて103万円から150万円まで4つの壁がありますが、そのうちアルバイト学生(勤労学生)には次のような「壁」があります。

◆「勤労学生」の税金の壁は130万円◆
給与所得者の場合、103万円までは所得税がかかりません。課税所得を算出す
る際、収入から給与所得控除(55万円) と基礎控除(48万円)を引くことが出
来るため、収入が合計103万円以下であれば課税所得が0となるからです。これが103万円の壁です。
学生アルバイト(勤労学生)の場合は、 一定の条件を満たすとさらに勤労学生控除(27万円)を適用することができます。すなわち給与収入130万円(103万円+27万円)までは所得税がかからないということになります。勤労学生となるのは次の3つの要件に当てはまる人です。
(1)給与所得などの勤労による所得がある、(2)合計所得金額が75万円以下 (給与所得が130万円以下)で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下である、(3)特定の学校の学生・生徒である。この「特定の学校」というのは、学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校や、国・地方公共団体・私立学校法に規定する学校法人等に設置された専修学校等です(当てはまるかどうか不明の場合は、通学している学校の窓口で確認することをお勧めします)。
なお、住民税(所得割)の場合は、非課税となる金額が少し変わってきます。住民税(所得割)では給与所得控除が55万円、基礎控除が43万円、勤労学生控除が26万円なので、給与収入が124万円までであれば住民税非課税となります(住民税の場合は自治体により異なる均等割もありますので、お住いの自治体にご確認ください)。

◆勤労学生控除の注意点◆
勤労学生控除を適用すると、働いている学生自身の節税に繋がりますが、親等の扶養家族の対象から外れる点に注意が必要です。19歳以上23歳未満の扶養親族については、 特別扶養控除として63万円が控除できます。子どもが勤労学生となり、所得の多い親が扶養控除を使えなくなると課税所得が増え、結果的に世帯全体の納税額が増えることになります。

◆社会保険の壁にも注意◆
社会保険についても注意が必要です。国民年金は20歳になると学生でも被保険者となり、保険料の納付が義務となりますが、学生には「学生納付特例制度」といって申請すれば在学中の保険料納付が猶予される制度があります。一定の所得を超えると、この制度を利用できなくなります。
学生納付特例制度の所得要件は、前年所得が「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」以下であることです。扶養親族がおらず社会保険料控除もなければ、年収128万円がこの特例制度が使える上限となります(収入が多ければ、年金保険料もきちんと納めてね、ということです)。
健康保険も要注意です。学生の子どもが親の健康保険に扶養家族として加入している場合、勤労により年収が130万円を超えると扶養から外れ、学生自身で国民健康保険に加入する必要が出てきます。新たに発生する国民健康保険料の増加は、世帯収入の減少に繋がります。

◆世帯収入がどうなるか?を確認しよう◆
学生の子どもがやる気をもって働く姿を見るのは嬉しいものです。しかし、壁をちょっと超えた結果、家計全体に大きなマイナスの影響を及ぼしたとしたら、それはちょっと残念ですね。我が家のFPとして、日頃から家族間のコミュニケーションを図り、時には家族会議を開いて「我が家のお金(収入)」事情について話し合ってみてはいかがでしょうか。 (青山)