(2024年8月8 日発行)
連日、パリオリンピックで健闘する選手たちの姿に感動し、元気をもらっています。外気と室内の温度差に身体から悲鳴が上がるような毎日ですね。どうぞご自愛ください。
◆令和6(2024)年財政検証結果~女性の年金額の見通しが明らかに~
先月、令和6年の公的年金制度の財政検証結果が公表されました。財政検証は、現行制度に基づいて年金財政の将来の見通しを立て、健全性等を検証するもので、20年前の平成16(2004)年の年金制度改正により5年ごとの実施が法制化されています。
今日は、この財政検証について、押さえておきたいポイントを簡単に確認しましょう。
◆現在の年金制度の枠組み
現在の年金制度の枠組みは平成16(2004)年の年金制度改正により出来ました。少子高齢化が進む中、現役世代の年金負担を過度に増やさないために、年金保険料に上限を設け(現在は国民年金保険料17,000円、厚生年金保険料率18.3%)、長期的に保険料収入と年金給付(支出)のバランスがとれるよう、マクロ経済スライドが導入されて年金の給付水準が自動調整されるしくみになっています。
◆所得代替率で見る財政見通し
財政検証では、人口と労働力について3パターン、経済状況については実質経済成長率が1.6%からマイナス0.7%まで4パターンを想定し、パターン毎に所得代替率※がどれくらいになるかを試算しています。
※所得代替率:夫婦2人世帯の年金受給額が現役男子の平均手取り収入額に対してどれくらいの割合になるかを表したもの
(2024年度のモデル年金額:夫婦2人の基礎年金13.4万円+夫の厚生年金9.2万円=22万6千円。これに対し現役男性の平均手取り収入額=37万円)
所得代替率は、2024年度時点で61.2%。2060年度の所得代替率は、実質経済成長率が1.1%と仮定したケースで57.6%、マイナス0.1%のケースで50.4%等と、50%を超える見込みとなりました。
◆今回から公表された新データに注目!~女性の年金額も把握可能に~
財政検証では、将来の所得代替率のほかに、年金額の将来見通しも立てています。その中で、今回「一人分の平均年金額と年金月額」についてのデータが新たに提供されました。財政検証のモデル年金額は、夫が主な働き手で妻が専業主婦の「片働き夫婦世帯」が基本となっていますが、ライフスタイルの多様化に対応すべく、年金加入履歴に基づいた個人ごとの受給金額の予測が出された形です。
これによると、実質経済成長率1.1%を前提とした場合、平均年金額は65歳男性で14.9万円、65歳女性で9.3万円であるのに対し、30歳男性が21.6万円、30歳女性は16.4万円と増えています。高齢になっても就労し厚生年金の加入期間が延びることが反映されていると見られます。
<参考:65歳時点の年金額見通し>
[単位:万円]
年齢 | 男性 | 女性 |
65歳(1959生) | 14.9 | 9.3 |
50歳(1974生) | 15.6 | 10.9 |
40歳(1984生) | 18.0 | 13.2 |
30歳(1994生) | 21.6 | 16.4 |
他方、将来も年金額の男女格差があまり縮まらないことが見て取れますし、50歳女性の年金額は10万円ちょっとであることも明らかになりました。収入格差を埋めるために自分で何ができるか、将来の年金額を増やすためにどのような働き方をすべきか。行動を起こせる年代の方は、ぜひご自分の将来の年金について考えて頂きたいと思います。(青山)
将来の公的年金の財政見通し(財政検証) |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html