(2020年7月15日発行)
◆成年後見制度について(1)
今年は2000年に始まった成年後見制度の20周年に当たります。同年にスタートした介護保険制度と比べると浸透度は今一つ。2016年に「成年後見制度利用促進法」も成立していますが、利用は進んでいません。そこで、成年後見制度の内容と問題点について、今回から2回にわたり見ていきます。
◆成年後見制度の利用状況
最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」によると、2019年(平成31年1月~令和元年12月末)の成年後見申立件数は35,959件、うち任意後見監督人選任の申立件数は748件でした。令和元年12月末日時点の成年後見制度の利用者数は224,442人、うち任意後見制度の利用者は2,652人です。
一方内閣府の「高齢社会白書(平成29年版)」によると、認知症高齢者数は2012年で462万人、2025年には約700万人になると推計されています。この数字を基に計算すると、成年後見制度の利用者は認知症患者の1%にもなりません。利用が進まない背景には、制度特有の硬直性(使い勝手の悪さ)があるようです。
それではここから、成年後見制度の1つ「法定後見制度」について見ていきます。
◆成年後見制度その1~法定後見制度~
「法定後見制度」は、既に判断能力が不十分な人を支える制度です。家庭裁判所が後見人を選任しますが、直近のデータでは親族後見人が約22%、弁護士・司法書士等親族以外からの職業後見人が約78%を占めています。
後見人の役割は、財産管理と身上監護です。財産管理の内容は、本人の代わりに通帳・印鑑・証書類等の全てを手元におき、財産が目減りしないように管理することです。年に1回家庭裁判所に財産管理状況を報告する義務もあります。身上監護は、本人のために診療・介護・福祉サービス等の利用契約を結ぶことが主な内容です。契約後もサービスが適切に行われているかチェックします。
法定後見制度には次のような問題点があります。
①後見人の選任が家庭裁判所に委ねられており、決定に対して不服申立できない。
家族が後見人になりたいと思っても、適格でないとみなされると専門家が選ばれてしまう可能性もあります。
②職業後見人が選任されると本人の財産が完全に家族の手を離れてしまう。
家族はお金が必要になるたびに後見人に必要額を請求しなければならず、請求しても「本人のためにはならない」と却下されてお金を出してもらえないことも。トラブルも少なくありません。
③報酬の支払い負担がある。
法定後見制度は基本的に亡くなるまで続くため、後見人への報酬を払い続ける必要があります。
既に判断能力に欠ける方の尊厳と財産を守る制度なため、厳格な運用になっているのはやむを得ないところもありますが、制度を利用するにも覚悟が必要と言えそうです。
次回はもう一つの成年後見制度である「任意後見制度」についてお伝えします。 (青山)