(2020年8月2日発行)

◆成年後見制度について(2)

前回は、成年後見制度の利用が進まない現状を数字で確認し、成年後見制度の一つ「法定後見制度」についてお伝えしました。法定後見制度は「既に判断能力が不十分になっている人」を支える制度です。今回はもう一つの制度である「任意後見制度」について見ていきます。

◆成年後見制度その2~任意後見制度~

「任意後見制度」は、本人に十分な判断能力があるうちに、自分の判断能力が低下した時に備え、あらかじめ自ら選んだ人(任意後見人)に代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。財産管理や身上監護(高齢者施設などの住まいの確保や介護福祉サービスの契約・手配など)等、希望する内容について任意後見人に代理権を与える委任契約(「任意後見契約」)を公正証書で作成します。任意後見契約は、契約を結んですぐに発効するわけではありません。契約の効力は、いよいよ本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任したときから生じます。任意後見監督人は、任意後見人が任意後見契約の内容どおり適正に仕事をしているか、任意後見人から財産目録などを提出させるなどして監督します。任意後見監督人は、任意後見事務について家庭裁判所に報告し、家庭裁判所の監督を受けることになります。

◆任意後見制度の利点

任意後見制度は、「自分が信頼し、お願いしたい人」に後のことを託せる点がメリットです。本人の意思に関係なく家庭裁判所が法定後見人を選任してしまう「法定後見制度」との大きな違いと言えるでしょう。また「こうしてほしい」と自分が望む内容を具体的に取り決められる点もメリットと言えます。

◆任意後見制度の問題点

一方、デメリットもあります。

①報酬の支払い負担がある

任意後見制度では、後見人に加えて、後見人の監督者である任意後見監督人にも報酬を支払う必要があります。基本的に亡くなるまでずっと払い続ける必要があるため、それなりの出費になります。

②詳細な指示がないと後見人の行為が任意後見監督人に否認される可能性がある

任意後見契約では、行為の内容について具体的に細かく取り決めることが出来ますが、逆に言えば、「決めていないことはできない」ということになります。財産管理などについて「どんな時にどうして(支払って)ほしい」と出来るだけ具体的に細かく取り決めておく必要があります。内容が複雑になってきますので、専門家のアドバイスを仰ぐことをお勧めします。

③任意後見制度でできないことがある

任意後見人は、医療行為についての同意や延命治療についての指示は出来ません。また任意後見契約は本人の死亡時点で終了するため、死後の事務手続きなどもできません。死後事務手続きについては、「死後事務に関する委任契約の特約」を付けることで可能になりますので、気になる方は専門家に問い合わせることをお勧めします。

年々「おひとりさま」「おひとりさま予備軍」は増えています。ご紹介した「任意後見制度」は、おひとりさまの老後生活の不安を小さくし、最期まで自分らしく生きていくために活用できる制度の一つです。いざという時のために、ぜひ知識をブラッシュアップしてくださいね。  (青山)