(2020年12月15日発行)

今年の漢字に「密」が選ばれました。今年は密を避けることに心を砕き、オンライン等これまでと違った形で繋がることが増えた一年でした。来年は、心おきなく会いたい人に会い、話ができる生活に戻るよう願ってやみません。

◆高齢者の医療費自己負担額引き上げ◆

昨日「全世代型社会保障検討会議」の最終報告が発表され、一定所得以上の後期高齢者の医療費自己負担割合を2割に引き上げることが正式に決まりました。

現行制度では、医療費負担は69歳以下が3割、未就学児と70~74歳は2割、75歳以上は1割となっています。70歳以上でも、現役並みの所得者の負担は3割です。今回の改革により、75歳以上でも年収が200万円以上あれば(単身世帯の場合。複数世帯の場合は年収合計が320万円以上)、自己負担が2割に引き上げられることになりました。該当するのは後期高齢者医療制度の約23%(約370万人)です。

◆高齢者の医療費自己負担の変遷◆

さて、高齢者の医療費(自己負担)は、これまでどのような経過をたどってきたのでしょうか。

昭和48年から約10年間、老人(当時の表記をそのまま引用)の医療費負担はゼロでした。老人福祉法に基づく「老人医療費支給制度」により、医療保険の自己負担分を、公費を財源として支給したのです。医療費の無料化は、老人の受診率上昇(1970年から1975年の5年間で1.8倍に)や社会的入院の増加、ひいては医療費の大幅な増加等の結果となり、財政悪化を招いて制度の見直しが必要となりました。昭和58年に「老人保健制度」が始まり、高齢者も医療費の一部を定額制で自己負担することになりました(外来400円/月、入院300円/日)。それから10数年かけて負担額はじわじわと引き上げられ、平成13年1月には定額負担から定率負担(1割)に改定されました。また平成14年には現役並みの所得者の自己負担額が1割から2割に引き上げられ、4年後の平成18年には2割から3割に引き上げられました。(一方で、平成14年に老人保健制度の対象年齢が70歳以上から75歳以上に引き上げられ、対象者の範囲が狭められました)。平成20年から「後期高齢者医療制度」が導入されましたが、自己負担額は「75歳以上1割負担(現役並み所得者は3割負担)」が今に至るまで継続しています。

令和4年には団塊の世代が75歳になります。現役世代の医療費負担がさらに大きくなるのは確実で、現役世代の負担増を抑えるためにも、負担能力のある75歳以上の高齢者に医療費負担を求めるに至ったのです。

生まれてから死ぬまでにかかる「生涯医療費」は、平成29年度の平均で2,724万円。うち半分が70歳以降にかかってくる医療費です。医療費の自己負担割合が上がれば、医療費支出として見積もるべき金額の見直しや老後の資金計画の再確認が必要になるかもしれません。

FPの会には、年金受給世代を対象にしたライフプラン講座「プラチナ世代の家計管理」があります。また個人相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。

(青山)