(2019年7月18日発行)

◆相続が変わった(2)

前回から改正相続法(「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」)についてお伝えしています。シリーズ2回目の今日は、さる7月1日から施行されている「遺留分制度の見直し」と「特別の寄与の制度」の創設についてです。

◆遺留分制度の見直し
~遺留分減殺請求の金銭での請求が可能に

「遺留分」とは、遺産分割の際、遺言の内容に関わらず相続人に一定割合で保障される相続分のことです。もし遺言が「親族以外の第三者に全財産を取得させる」という内容だったら、相続人には不利益です。そこで遺留分の侵害を主張すること(遺留分減殺請求)が認められています。
これまでは、遺留分減殺請求をした結果、相続財産の現物(不動産や株式等)を相続人が共有する事態が生じ、事業の承継の妨げとなる等問題となっていました。しかし今回の改正で、遺留分減殺請求は相当額を金銭で行うことが可能になりました。

◆「特別の寄与の制度」の創設
~これで義父母の介護が報われる?!

これまでは、相続人でない親族(例えば子の配偶者など)が長年被相続人の介護等をしても、遺言等がない限り遺産を受け取ることはできませんでした。しかし今回の改正により、相続人以外の親族が被相続人の介護や看護等を無償で行い、被相続人の財産の維持や増加に貢献した(特別の寄与をした)場合、相続人に対して一定の金銭(特別寄与料)を請求することができるようになりました。

◆「特別の寄与の制度」の問題点

世間から大変注目されているこの制度ですが、既に問題点もあります。

①対象が限られている

特別寄与料を請求できる条件の一つに、「相続人以外の親族であること」があります。つまり、事実婚や同姓カップルのパートナーは請求権者から外れることになります。

②特別寄与料の計算は簡単でない?!

「特別寄与料」は相続人の遺産分割協議で決定されます。遺産分割協議がまとまらないと家庭裁判所に処分の請求をすることができます。しかし、今回の改正ではその算定方法までは明記されていないのです。
既に始まったこの制度、これからどのように運用されるのか、今後とも注目していきたいところです。(青山)