(2021年6月1日発行)
衣替えにうってつけの晴天が広がりました。天気予報ではこの晴れ間も長くは続かないとのこと、いよいよ関東の梅雨入りも目前ですね。
前回は、昨年成立した「年金制度改正法」(2020年5月29日成立、同6月6日公布)から、被用者保険(厚生年金、医療保険等)の適用拡大についてお伝えしました。
今回は、年金受給に関する変更について3点確認します。
◆在職老齢年金制度の見直し◆
在職老齢年金制度は、厚生年金をもらいながら働く方を対象とした、年金の減額制度です。賃金と年金月額の合計額が一定以上になると、年金が減額されます。現在は基準額が年齢で異なり、60~64歳の方の場合は28万円超、65歳以降の方の場合は47万円超になると年金支給が一部または全部停止されます。
今回変更となるのは、60~64歳の方の基準額です。現行の28万円から、65歳以降と同じ47万円に引き上げられます。これにより、賃金と年金の合計額が28万円超47万円以下の方は、年金額を調整されることがなくなり、全額受給できるようになります。
◆在職定時改定の新設◆
また新たに「在職定時改定」が導入されます。老齢厚生年金を受給しながら働く方の年金額は、退職するかもしくは70歳になって厚生年金被保険者の資格を失うまで、改定されることがありませんでした。つまり、働き続けることで年々増える保険料の納付実績分が年金額には反映されてこなかったのです。
2022年4月からの新制度導入により、保険料の納付実績は毎年10月に反映されるようになります。すなわち、働きながら受け取る年金額が少しずつ増えることとなり、働く年金受給者の収入基盤がより充実することになります。
◆年金受給開始時期の選択肢の拡大
老齢年金は、原則65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から70歳の間で自由に受給開始を早めたり遅くしたりすることができます。
現行制度では、受け取るのを遅くする(=繰下げ受給)場合は、ひと月あたり0.7%ずつ年金額が増額され、最大で42%年金額が増額されます(0.7%×12カ月×5年)。受け取るのを早める(=繰上げ受給)場合は、ひと月あたり0.5%ずつ年金額が減額され、最大で30%減額されます(0.5%×12カ月×5年)。
今回の改正で、繰下げ受給できる年齢が75歳まで引き上げられます。増額率はひと月あたり0.7%で変わりませんが、最大で84%(0.7%×12カ月×10年)の増額となります。2022年4月1日以降に70歳になる人が対象です。
他方、繰上げ受給する場合の減額率は0.5%から0.4%に引き下げられます。年金額の減額は、最大で24%と小さくなります(0.4%×12×5年)。こちらは2022年4月以降に60歳に到達する人が対象となります。
今回の改正は、セカンドライフ以降の働き方や経済基盤の確立に大きく関わる内容です。選択の幅が広がる分、これまで以上に1人ひとりがしっかりと自分の人生について考え、どうするかを決めていくことが求められます。
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