(2023年4月17日発行)

花の季節がやってきました。近所のハナミズキやモッコウバラが鮮やかに咲いています。文京区の根津神社はツツジが有名ですが、早くも満開に近い状態になっていました。花粉の飛散も大方終わりに近づいている様子、マスクを外してお出かけされる方も増えそうですね。

◆2023年度税制改正~相続・贈与税改正のポイントを押さえよう~◆

2023年(令和5年)度の税制改正が、3月29日に成立しました。今回、相続時精算課税制度と暦年課税制度の生前贈与加算について大きな改正がありましたので、確認したいと思います。

◆贈与税の基本を確認~2つの課税方法について~◆

まずは贈与税の基本をおさらいしましょう。贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらかを選択することができます。暦年課税は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた金額のうち、基礎控除額の110万円を超えた部分(金額)について、所定の方法で税額を計算します。贈与税の計算ではこの暦年課税が基本形となります。暦年課税は回数に制限はなく、毎年贈与することも可能です。贈与額が(基礎控除額の)110万円までであれば申告も不要です。しかし相続時には、死亡前3年以内に受けた贈与額を相続財産に足して相続税を計算することになっています(納付済みの贈与税は税額控除されます)。

相続時精算課税は、2500万円まで非課税で贈与でき、2500万円を超えた部分に一律20%が課税されます。1回の贈与で非課税枠を使いきる必要はなく、何年かかけて贈与することも可能です。しかし相続時精算課税制度には暦年贈与のような基礎控除がないため、少額の贈与であっても贈与の度に申告する必要があります。相続時精算課税制度を利用して贈与した財産はすべて、相続時に精算(再計算)して課税されます。この制度を選択できる対象者は限られており、贈与者(あげる人)は贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母、受贈者(もらう人)は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫、となっています。相続時精算課税制度は、一旦選択すると、同じ贈与者からの贈与については変更ができない(暦年課税に戻ることができない)ので注意が必要です。

◆今回の変更点(1)相続時精算課税制度に110万円基礎控除の創設◆

今回の改正で、相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が創設されることになりました。これにより、相続時精算課税制度を選択した場合の贈与に際し、暦年課税と別枠で基礎控除(年間110万円)が控除できるようになります。相続時精算課税制度の適用者が特定贈与者から贈与を受けた場合でも、年間110万円以下(基礎控除の範囲内)であれば、申告も不要になります。

またこの改正と併せて、相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が被災した場合には、相続時にその課税価格を再計算されるようになりました(改正前は被災者への対応はありませんでした)。

◆変更点(2)暦年課税における生前贈与加算期間の見直し◆

今回の改正で、相続の計算の際に加算される生前贈与の期間が3年から7年に延長されることになりました。2024年1月1日以降の贈与から適用されます。2027年1月1日以降段階的に延長され、2031年1月1日に加算期間が7年となります。ただし、延長する4年間に受けた贈与分については、合計で100万円が控除されます。

◆おまけ◆

なお、直系尊属(父母・祖父母)からの教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置は、令和5年3月31日が期限となっていましたが、教育資金が3年(令和8年3月31日まで)、結婚・子育て資金が2年(令和7年3月31日)延長されました。(青山)