(2023年8月16日発行)
お盆に日本列島を直撃した台風7号の影響が今日も残っています。新幹線は、昨日の運休に加え、今日も運転を見合わせた時間があり、多大な影響が出ているようです。台風に罹災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、台風の影響で足止めをされている皆様が、少しでも早く目的地に到着できることをお祈りいたします。
◆来年4月から相続登記の申請が義務化されます
所有者不明土地の問題については、当メルマガでもたびたび内容をお伝えしてきました(※)が、所有者不明土地の発生を予防するための法改正である「相続登記の申請義務化」が令和6年4月1日に始まります。施行まであと半年あまりとなり、法務省が周知のためにHPや資料等の充実を図っています。
今日は、我が家のFPとして押さえておきたい「相続登記の申請義務化」のポイントを確認していきましょう。
※FPの会だより64号(2021年8月1日発行) https://fpnokai.org/2021/08/04/mm64/
◆登記申請義務化の対象となるのは?
令和6年4月1日から登記申請の義務化の対象となるのは、次の相続登記と住所変更登記です。いずれもこれまで任意だったものが義務化され、正当な理由なく申請を怠った場合は10万円以下の過料に処されます。
1.不動産を取得した相続人による相続登記
取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられます。
2.施行日前に相続し、相続登記していない不動産の所有者(相続人)による相続登記
令和6年4月1日より前に相続した不動産であっても、相続登記がされていないものは相続登記申請が義務となります。ただし3年間の猶予期間があります。
3.不動産の登記名義人で、住所変更をした場合の住所変更登記
住所等の変更日から2年以内に変更登記の申請をすることが義務付けられます。また令和6年4月1日以前に住所等を変更したが変更登記をしていない場合も、義務化の対象となります。ただし猶予期間(2年間)があります。
◆相続登記の具体的な申請内容
相続登記にあたっては、遺産分割の内容や遺言書の内容を踏まえた登記申請を行うことも義務付けられています。
ケース別に確認しましょう。
1.遺言書に基づいて相続した場合
遺言(特定財産承継遺言又は遺贈)によって、不動産の所有権を取得した場合は、相続人は取得を知った日から3年以内に遺言の内容を踏まえた登記申請を行います(相続人申告登記の申告でも可)。
2.3年以内に遺産分割が成立した場合
登記期限である3年以内に遺産分割の内容を踏まえた相続登記の申請が可能な場合は、遺産分割の内容を反映して申請します。
それが難しい場合等は、3年以内に「相続人申告登記」の申出を行っておき(法定相続分での相続登記の申請でも可)、のちに遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記の申請を行います。
3.3年以内に遺産分割が成立しなかった場合
まずは3年以内に「相続人申告登記」の申出(法定相続分での相続登記の申請でも可)を行います。
その後に遺産分割が成立したら、遺産分割の成立日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記の申請を行います。もし成立しなければ、それ以上の登記申請は義務付けられません。
なお「相続人申告登記」は、相続義務化施行と同時に令和6年4月1日より新たに設けられる制度で、不動産の登記名義人(所有者)が亡くなって相続が開始したことと、相続人申告登記の申請者が相続人であることを申し出るものです。遺産分割が済んでいなくても、とりあえず「私が相続人ですよ」と申し出ることができ、申請義務を履行したものとみなされます。
◆相続登記にかかる登録免許税の免税措置
相続登記の義務化に際し、次のようなケースでは、0.4%の登録免許税が免税される場合があります。
1.相続により土地を取得した個人が、相続登記をせずに死亡した場合の相続登記の登録免許税の免税措置
例えば、登記上の名義人(所有者)であるAさんが死亡し、Bさんが相続したが、Bさんが相続登記をしないまま亡くなってしまったというケースです。Bさんの相続人であるCさんは、BさんからCさんへの相続による所有権移転の手続き(相続登記)を行う前に、AさんからBさんへの相続による所有権移転登記を行い、Bさんをその土地の登記名義人にする必要があります。このBさんの相続登記について、登録免許税が免除されます(ただし、B→Cへの相続による所有権の移転登記は免税措置の対象外です)。
2.不動産の価額が100万円以下の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置
相続により取得した土地の価額(市町村役場の固定資産課税台帳に登録された価格。登録された価格がない場合は登記官が認定した価額)が100万円以下の場合、相続人が行う所有権移転等の相続登記の登録免許税0.4%が免除されます。
この登録免許税の免税措置は、令和7年3月31日までとなっています。
これまで義務とされていなかった手続きの義務化ですので、皆さんの身近なところにも手続きが必要な事案があるかもしれません。ぜひ一度ご確認ください。(青山)
<参考HP>
法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
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