(2020年10月1日発行)

9月27日に行った無料オンライン講座には、30名を越える方のご参加を頂きました。「今後も継続してほしい」とのありがたいお声も頂いています。これからも色々企画して参りますので、どうぞお楽しみに!

◆親のお金を守るには?~親が認知症になる前にやっておきたいこと~

皆さんは、ご自分の親が認知症になった後のお金や財産について、対策を講じないとどうなるかご存知でしょうか?

認知症や病気・事故が原因で認知機能を失い、「判断能力が不十分」と認定されてしまうと、生活上様々な制限がかかります。契約行為を含む法律行為全般…預貯金の引き出しや契約書などへの署名押印、不動産の売却・処分、相続手続き(遺産分割協議等)への参加、遺言作成、財産の贈与など…ができなくなります。つまり、親が認知症等で判断能力を失うと、たとえ自身の介護費用を捻出するためであっても、自分のお金や財産を自由に動かせなくなってしまうのです。

このような事態を避けるための方法として、「成年後見制度」や「民事信託」の活用があります。

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の財産管理や身上監護(身の回りの手続きなど)をするために設けられた制度です。本人の財産を守ることが至上命題のため、融通が利かない点も多く、それほど利用が進んでいません(関連記事:メルマガ39号・40号)。これに代わり注目されているのが「民事信託」です。

◆民事信託とは

民事信託は、信頼できる家族や個人に自分の財産管理・処分を任せ、財産を残したい人にはそれを継がせるようにする仕組みです。委託者(財産を託す人)と受託者(財産を託され管理する人)が信託契約を結ぶことで、不動産や預金といった一定の信託財産について管理・処分する権限を委託者から受託者に移します。委託者が認知症になって判断能力がなくなっても、受託者は委託者のお金や財産を柔軟に管理(処分)できるようになります。

高齢の親(委託者)とその子ども(受託者)の例で仕組みを考えてみましょう。親子で信託契約を結び、管理・処分してほしい財産を信託財産として、その所有権を子に移します(登記上信託と分かるように記載されます)。こうしておくことで、親が認知症等で判断能力がなくなっても、子が信託財産を管理することができ、必要に応じて処分して換金することも可能となります。

◆民事信託の注意点

民事信託はあくまで財産を円滑に管理・処分してもらうための制度なので、後見人のような法律行為や身上監護は逆にできません。認知症になった後を見据えて別途成年後見制度を利用する必要がある場合や、遺書を用意しなければならない場合があります。また財産に関わる契約なので、きちんと家族で話し合い、合意形成しておかないとトラブルに繋がります。

民事信託は、高齢の親を持つ家族の抱える困りごとに柔軟に対応できるスキームですが、ご家族により仕組みの設計方法は違ってきます。専門的な知識と経験の豊富な専門家に相談したいものですね。当会の個人相談をご利用頂き、専門家にお繋ぎしたケースもございます。まずはお気軽にお訊ねください。(青山)