(2022年4月2日発行)
令和4年度が始まりました。年度の変わり目は、私たちの暮らしに関わる制度の変わり目でもあります。今年は成年年齢引き下げという大きな制度変更に加え、年金制度の改正も目白押しです。
◆年金保険料と年金保険額はともに減少◆
令和4年度の国民年金保険料は、月額16,590円(前年度比▲20円)です。同じく新年度の国民年金(老齢基礎年金)の受給月額は64,816 円(同▲259 円)となりました。名目手取り賃金の減少に伴い、0.4%減額されました。
◆繰下げ受給の上限年齢の引き上げ
老齢年金は基本的に65歳から受給できますが、いつから受け取るのかは、自分で決められます。今回の改正で、老齢年金の受給を繰下げ(=遅く受け取る)する場合の年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられました。令和4年4月1日以降70歳になる方が対象となります。
◆繰上げ受給の減額率の見直し
老齢年金の繰上げ受給(=早く受け取る)する場合の減額率が、1月あたり0.5%から0.4%に変更されました。令和4年4月1日以降60歳になる方が対象です。
◆在職老齢年金制度の見直し◆
働きながら老齢厚生年金を受給する方は、毎月の給料(月額)と老齢厚生年金月額の合計額が一定基準を超えてしまうと、年金の全部または一部が支給停止となります。これを在職老齢年金制度と言います。これまで年金支給停止の基準額は65歳未満の場合28万円、65歳以上が47万円となっていましたが、今回の改正により、65歳未満の方の基準額が65歳以上で働く方と同じく47万円に緩和されました。
◆在職定時改定の導入◆
働きながら老齢厚生年金を受給する方の年金額が、毎年改定されるようになります(これまでは退職するか、70歳になり厚生年金被保険者の資格を失うまで改定されませんでした)。基準日である毎年9月1日に厚生年金保険の被保険者である場合は、翌10月分の年金から改定されます。
◆加給年金の支給停止ルールの見直し◆
加給年金は、厚生年金に20年以上の加入実績がある方が、65歳になった時点で生計を維持する配偶者または⼦がいる場合に、自身の老齢厚生年金に上乗せして受給できるものです。加給年金の扶養条件は「生計が同一であること」「被扶養者の年収が850万円未満であること」です。夫婦共働きで同程度の収入があったとしても、条件に該当すれば加給年金の支給対象となります。
これまでは、「加給年金の被扶養者である配偶者(厚生年金に20年以上の加入実績あり)の年金給付が全額支給停止となっている場合には、加給年金は支給される」ルールでした。つまり、総収入が多い世帯で、配偶者の収入が多いために年金給付が全額停止になっているような場合でも、条件に当てはまれば加給年金が支給されていたのです。しかしこれは「必要性の高い人に給付を行う」という公的年金の「必要給付」の考え方からは外れるケースと言えます。
今回の改正では上記のような齟齬をなくすために、「配偶者が厚生年金に 20 年以上加入した実績に基づく老齢年金を受け取る権利を持っている場合には、その年金が実際に支給されている、いないに関わらず、配偶者加給年金額は支払われない」ということになりました。
◆国民年金手帳の発行は終了◆
令和4年4月1日以降に国民年金制度または厚生年金制度に初めて加入する人から、「基礎年金番号通知書」が発行されるようになります。今後国民年金手帳は発行されません。(青山)